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author 米 [write]

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あなたに飢餓してる


(♂直主:ダンジョンにて)

背伸びをしても逆立ちをしても手を伸ばしたって僕はあの人に届かない。けれど求めて止まないのだ。今までこれほどまでに何かを求めたことはなかったのに。(小説の中にあるラブロマンスなんて所詮はフィクション。奇跡の恋なんてありはしない)

あの人の背中はいつだって広くて後ろから腕を伸ばせばきっと届くと思ってもそれは錯覚だった。まるで砂漠に揺れる蜃気楼のように遠いあの人。いっそ人ならざる存在として全てを超えた、気高い魂が僕の頭が描く妄想により形を帯びただけなのかもしれない。(嗚呼それならどれだけ良かったか)



今日もまた、あの人の灰色の髪が駆ける足によって風に靡いてふわりと揺れる。黒い制服の上着がひらひらとはためいてそれを追う僕達は、まるで白兎を追うアリス。そんな甘い例えが当て嵌るほどこの世界は優しくはないけれど。だって此処は、人知れず命を落とす可能性すら高く秘めた人々の思想が生み出した濃い霧の中。僕らはそこを目を凝らし武器を手に取り異形と争う。

「先輩!」

蠢いた黒い影に張り上げる声。ちらりと目配せした灰色の双眸は躊躇なく僕の声に影を一閃し闇を切り裂いた。(美しい。やはりあなたは僕の理想)

「お怪我はありませんか」

僕は果てなく続く薄暗い通路を足早に駆け二人きりとなったあなたにそっと近寄る。鋭く一閃し跡形なく霧散した敵の気配はなく、同時にアナライズする女性の声もない。きっと後方から駆けて来る人達を案内しているのだろう。

「あぁ、大丈夫だ。ありがとう直斗。少し先を急ぎ過ぎたみたいだな」

「いえ…ですが他の皆さんも消耗が激しいようなので今日はこれくらいで切り上げましょう。暫くは晴れの日が続きますし、腕を上げるにしても休みも適度に取らないと返って危険です。先輩も、先陣を切ってばかりでは特に疲労が溜まるでしょう」

そんなことを上手く言いながら、僕はこの手に持つ銃のトリガーを引く前に全てを終わらす圧倒的な強さを示すあなたに惹き付けられている。敵とあらば一切の容赦なく殲滅する、他の人には見せない冷徹さを僕だけが知っているのだと思うと、それだけで胸の底から湧き上がる暗い歓喜の声が漏れ出しそうになる。その無慈悲なあまり逆に背筋の震えるような美しさは、僕だけが唯一認識しているのだ。

「先輩、後続の方々追いついたら帰りましょう」「…仕方ないな。直斗に言われたら何だか逆らい難いし、大人しく言うことを聞くよ」

「そうして下さい」

だから僕は一人先をゆくあなたに何処までも付き従う。あなたが何故僕にだけ、あの親友にすらも見せない一面を見せるかは別に気にしない。手に入れられないならいっそそれでも構わない。けど今はこの優越に浸らせて。そしていつまでも見つめさせて。望むだけは許しておいて。

甘い恋なんて要らないから。



遠くで戦闘をアナライズする女性と仲間の声が聞こえる。僕らは会話を取り止め追いついた彼らに心配されたり怒られたりしながらどちらとも不器用な笑顔を浮かべて謝罪した。
すると仲間達は一様に呆れたような溜め息や顔をして仕方ないと零す。けれど内心では分かってるのだろう。僕らがまた二人で先を駆けてしまうこと。それを止める術も追いつく足もないことを。

(だってそれが僕らだから)
(先輩と二人でいる時間だから)
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2008.11.28(Fri)





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