the latest //  案内・作品一覧


author 米 [write]

スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--.--.--(--)



それは溢れるばかりの


(真ED後数年後堂主+菜々子で主人公のお迎え)

数年振りに再会したお兄ちゃんは最後に別れたあの日よりももっとずっと、私達の思い出の中にいる以上に綺麗になっていて、驚きに目を見開くお兄ちゃんの姿に私はお父さんと二人で都会に出て来て良かったと心から思った。

「堂島、さん…?菜々子…も、どうして」

「お前を迎えに来たんだ」

「そんな、どうして」

夢みたいなこと、と震える声でお兄ちゃんが言うと私の手を繋いでたお父さんが間違いなく現実だ、と笑った。あれから、お兄ちゃんは結局八十稲羽に戻って来ることはなくて、その代わりに送られてくる季節ごとの絵葉書。(お元気ですか。此方は都会にいる為か季節の流れが感じにくく、どうしても息が詰まって仕方がありませんが、そちらはもう桜も散って緑の濃い新緑の葉が澄んだ空気の中で芽吹いている頃でしょうか。写真は以前大学の友人が撮ったもので、五月の頭に撮影したキャンパスの街路樹です)
これがお兄ちゃんから最後に届いた手紙。お兄ちゃんは絵葉書の写真には写ってないけれど写っていた道をいつも歩いていると言うなら心の中がぽかぽかした。そして私はお兄ちゃんにもっともっと会いたくなって、手紙を読んだお父さんの横顔を見上げながらそっと手を引いてお願いをした。(お兄ちゃんに会いたいよ)(…なら、迎えに行こうか)

「帰ろう、葵。離れていても家族だなんて言ったがやっぱり俺と菜々子にはお前って言う奴が傍にいないとどうも駄目らしいからな」

実は姉さんや義兄さんにももう先に相談してあるんだ、なんて。お父さんはお兄ちゃんを迎えに来る前にお兄ちゃんのお母さんやお父さんに会ってたことを笑って話して、驚いた顔を見せるお兄ちゃんを抱き締めた。私もそれが羨ましくて、一生懸命お兄ちゃんの手を取って横から抱きつく。もう離れたくないの、ずっと一緒が良いの、ねぇお兄ちゃん。

「菜々子…」

人目を引いてもお父さんも私も関係なかった。だって今離したりしたらお兄ちゃんは恥ずかしがり屋さんだから逃げちゃうってそんな気がしたから。お父さんはお兄ちゃんに好きだ、と耳元で囁いたけど私はそれに気付かないふりをして、お兄ちゃんの身体が小さく震えると本当に夢みたい、とってもあたたかくてやさしい、泣いてしまいそうな声がした。

お兄ちゃんの葵って言う名前をお父さんが呼べばそれは今まで聞いたことがないくらい甘さで覆われてて、私まで胸がくすぐったくなる。ぽたり、ちいさな雫が空から落ちてきて私はそれが顔を上げなくてもお兄ちゃんの涙だと知った。

「泣くなよ、葵。男の子だろう」

「泣いて、ません」

「泣いてるじゃないか」

「目に埃が入ったんです」

「そうかそうか。…で、一緒に帰るんだろう?」

「……当然です。あそこが俺の、家ですから」

涙を拭って微笑んだお兄ちゃんは、やっぱりとっても綺麗だった。



その日から、お兄ちゃんは私達の家に戻ってきた。お父さんは嬉しそうでいつも仕事が終わると真っ直ぐ帰ってきて、私もお兄ちゃんのご飯が楽しみで真っ直ぐに帰る。時々一緒にお買い物にも行って、そこでジュネスのお兄ちゃん達にもたまに会って話して、毎日がすごく楽しい。
お兄ちゃんは大学を辞めてしまったけれど、それを気にもせずに笑顔で私達を迎えてくれるから。ここが私たち三人家族の、本当にあるべき家の風景なんだと、そう思う。
スポンサーサイト

2008.11.28(Fri)





/
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。