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author 米 [write]

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睡眠心中


(花♀主前提影村♀主:触れない指先♀主版)

(最近、きみの夢をよく見るんだ)



例えばそう、清らかなきみの肢体はそこに横たわっていて香しい花々の香りに包まれて笑う童話のお姫様のように穏やかな笑みを浮かべて静かに眠っているんだ。俺はきみの愛しい寝顔に手を伸ばして触れて抱き寄せて、そっと、そおっと、触れる空気に音さえ掠める事なくこれまた静かにキスを落とす。真っ白なきみは煌めく灰色の髪をさらりと揺らして、でも未だ眠ったまま、俺はねぇ起きてお姫様、なんて戯言のように囁くけれど、無情にもきみは歯車に指を触れて眠ったお姫様や義母の嫉妬に林檎を食して倒れてしまったお姫様の話のようにキスをしたくらいじゃ起きる事はなくて、なぁ、ともう一度呼び掛ければふるり震える愛しい瞼の長い睫毛。

「起きて。葵」

起きて。目を覚まして欲しい。きみの柔らかな肌は好きだけどきみの暖かな温もりが何処か次第に冷えて来ている気がするんだ。何故だか白いドレスに身を包んだきみはとても綺麗で可愛くて、夕焼けでもないのに真っ赤な茜色の世界が広がるこの場所にずっといたら、本当に凍えてしまうよ?俺はきみを抱き締めながら、俺の片手に握られた鋭利な刃物の存在に気付かないで、ドレスをじわりじわりと侵蝕して染め上げる美しい赤に無性に泣きたくなった。(可笑しいな、きみはもう直ぐ目覚める筈なのに)(悲しい事なんかありはしないのに)

「起きてくれ。俺の、お姫様」

あいしてるよ。
早く目を覚ましてその目に俺を映して、微笑んで、名前を呼んで。(あれ?俺の名前はなんだっけ)



(最近、きみの夢をよく見るんだ)

横たわるきみの綺麗な寝顔。きみを抱き締める俺の泣きそうに歪んだ情けない顔。ぽたりと滴が小さく落ちて、そこでいつも夢は覚める。




「…な、むら…、…花村。大丈夫か?大分魘されてたみたいだけど…もしかして怖い夢でも見たのか?」

「…え?っは…、怖い夢ってガキかよ。…あー、でもよく覚えてないんだよな…寝てたわりに目ぇ冴えんの早ぇし。なんか言ってた?」

「いや。でも少し苦しそうだった」

「…そっか」

でも対した事じゃないんだ、きっと。だって夢は夢から覚めたら直ぐに忘れてしまうんだ。(だからきっと、これは正夢なんかじゃあない)(けど、どうしてそう思うんだろう)

そう、と優しく笑う東雲の俺を撫でる白くて小さな手に酔い痴れながら、俺は甘えるように柔らかい胸に寄り添い瞼を閉じた。

瞼を閉じた暗いそこに、鈍く光る金色を見たのはきっと気のせい。
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2008.11.28(Fri)





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