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author 米 [write]

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スロースターター


(花⇔主前提完→主)

その恋に気が付いたのは銀色のように透けた灰色の目が柔らかく眇められオレを見て微笑んだのを目の当たりにしたから、だと思う。その人はオレを周りのように見た目で判別しないで、思うが侭に晒けた何もかもを全部受け止めてくれて、今まで堪えて来たことを自分でも驚くくらいボロボロ零して逆に後から情けなく思った時にはそっと頭を撫でてくれた。お袋や、もういない親父にだってこんな風に優しく撫でてもらうなんてこと(少なくとも記憶する限りじゃ)なかったから照れと一緒につい周りに対してするように虚勢張った怒鳴り声を散らしそうになったけど、その時向けられた眼差しがあまりにも優しくて、柔らかくて、まるでひび割れた地面に雨が降ったようにじわりと胸の中が潤っていくのを感じて口は自然と閉口して縫い合わせたみたいに何も言えなくなった。

(オレは、この人が好きだ)

そしてそれを気付いて自覚するのは思いの外早くて、それまで男同士なんて変に噂立てられたりして糞食らえだと思ってたのにそれが先輩相手なら全然嫌悪感とかなくて、寧ろ嬉しいとか思っちまってて、確かに少しは驚きはしたけどそれよりその気持ちが頭に馴染む方が早くて、以来オレは先輩を見る度に視線で見えなくなるまで追い掛けて、もし見えなくなれば何処かにいるんじゃないかと思って逆に探したりして。本当にこんな女みたいな考えがオレにあったのかと思いつつ視線に気付いてくれやしないかと早速考えてみたり。とんだ重症な頭してると思わず笑いたくなる。けど、同時に気が付いちまったんだ。

オレが追い掛けるあの人。そしてあの人が追い掛ける別の人間。
それはオレもよく知る、いや、今までだったら関わり合いなんてなかったんだろうけど今じゃ随分と関わる羽目になって、顔を合わせれば話もするし放課後には他に知り合ったメンバーと一緒になってスーパーのフードコートに集まるような間柄の相手で、一つ上でしかもオレが好きな先輩と同じクラスで席も近いって言うその立場だけでも羨ましいくらいなのに気付いちまったその事実は軽いどころか随分と重い衝撃でオレを打ちのめした。だって先輩だけの片思いならまだしも、オレは分かっちまったから。先輩が好きなその相手もまた先輩のことを好きだって、目を見れば、声を聞けば、何気なく触れる手の仕草を窺えば、全部分かる。馬鹿なオレにだって好きな相手に関わることくらいじっと見ていた時間の長さにも関係なく理解出来て、なのに当の二人は二人してお互いの気持ちに気が付かないでそっと胸の中に秘めたままを決め込んでる。多分俺が最初抱いてたような男同士って言う考えがネックになってるんだ。

(…バカじゃねぇの)

そうやって胸の中で思うのはどうしようもなくて、二人して同じ恋をしてるんだったら早くどっちからでも告ってくっつけば良い。そしたらオレだって伝える前に終わったも同然の思いに区切りがつけられて、あの人の優しい笑顔を悲しませる前に整理も出来る。二人 の寄り添う姿はそりゃ見れば辛いだろうけど、この居心地の良い仲間内の間に無駄な亀裂なんか入れたくねぇしどうせなら好き合ってる連中に切り離すよりくっつけた方が良いと思う。…それにあの人の見せる本当の笑顔って奴が例え自分に向けられなくても遠巻きに眺められるんならそれでも構わないとすら思えてきた。マジで重症だと分かっちゃいるが、けどこのまま二人の立ち位置が何も変わらないんだったらオレがあの人を掠め取っちまうぞ。…なんて、どうせ出来っこねぇ無茶なことを考えてオレは色の抜けた白い頭をガシガシ掻きながら此処にはいない『運のいい男』に悪態をつくように息を吐く。

(オレが惚れた先輩に好かれてんだ。それがどんだけスゲェことか自覚しねーままなんて鈍感も過ぎんだろ…花村先輩)

出来るなら自分があの人の心を掻っ攫えたら良かった。それかもっと早くに出会えてたらあの人が惚れたのはオレになってたろうか。今更兎や角ウダついても仕方ないと再三思っても、それくらいオレはあの人に惚れてたんだ。あの人の全部に、心臓を持ってかれた。



「…ちっ、きしょ……胸、イテェ…」

だからオレの恋が叶わない分、あの二人には幸せになってもらわなくちゃならない。
押さえた左胸が今まで感じたことがないくらい痛んだ気がした。
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2008.11.28(Fri)





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