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author 米 [write]

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フレンドリーライン


(♂千♀主)

こんな気持ちを抱いたのは生まれて初めてだったかもしれない。

誰かを好きになるのも嫌いになるのも本当に簡単で単純で、でも嫌いになるのには辛いとか悲しいと少なからず、漠然とだけど思うのもあって。だから誰かを好きか嫌いになるかのどちらかって言う話だったら断然前者の方が俺的には多い…んだろうと思う。大体そんなことをいちいち考えてたりしないし、周りの皆もそうだと思う。
単純に好きか、嫌いか。そしてその中から本当に好きだなって人が現れたらそれが恋で、或いは似て非なる友情で、だったら俺の真横の席にいる彼女はどうなんだろうなと流れとして考えてみるのもアリで。
今までだったらこんなことを改めて考えるなんてなかったんだろう。けどそのきっかけを与えたのが彼女なら、それは単なる友情で済まされたりしないんじゃないかと言う考えも別方向から湧き上がって来たりする。

綺麗な横顔の、綺麗な転入生。

(でも綺麗なのは横顔だけなんかじゃないってのを俺は知ってるし)

まるで、まだ俺が小さかった頃遊びに行った友達の家で大切に大切に飾られてるのを見た外国製の人形みたいに整った顔立ちをした東雲葵さん。
彼女は今年の春、俺が進級すると同時にこの学校に転入して来た都会からのとびきり美人。そして、俺も内輪に含んだ特別捜査隊の女性リーダーでもあり、つい最近までは事情があったらしく男子生徒の制服を着ていたから男子と思ってたけど本当はれっきとした女の子で、あることがきっかけになって性別が露呈した後暫くするときちんと女子制服を着て来るようになった。
その格好はなんだか昔のスケバンみたいにスカート丈が長くて黒のハイソックスを履いた格好なんだけれどそれがまた意外と言うべきか、彼女が着るとまるで誂えたように似合っていて転入して来るまでは長かったと言うらしい髪があればもっともっと綺麗で、可愛くて、俺も見てみたかったな…とこっそり思ってしまうくらいで。

(今度通ってる美容院のおねーさんにウィッグ借りて来ようかな。髪長い格好、俺だけ見せてもらえるようにお願いしたら東雲さんのことだし案外OKくれるかも…)

本当の性別が知れて、制服が変わっただけなのに、今まで男同士仲の良い友人もしくはクラスメイトで接して来た周囲の男子は女子制服に身を包んで歩く東雲さんを最近やたらと見つめることが多くなった。それに気が付いたのはいつからだろう。いや、多分本能的に以前から気が付いていたんだ。ただその時はまだ彼女が『彼』だったから、『男』の姿をしながらまるで所々の仕草は女の子より女の子らしく繊細でたおやかだからその美貌も相俟って自然と目を惹いていた。だから、『彼』だった存在が実は『彼女』でしたとなれば自然と周りの目も堂々と惹けるし何よりフラグが立ちやすくなるって言う寸法。…なんのってそりゃ勿論、まぁ所謂恋愛としての?って奴。

男同士でもある意味付き合いやすい関係を築けるかもしれないけど、もし男女として区別がついてるんならそれ以上の関係にもなれる訳で、今まで俺の親友である雪が学校一の美形と噂立てられていたのをもしかしたらそれに張るくらいの美形ではと同様に裏で持ち上がっていた彼女は、今や学校きっての知的美人として男子の間では人気沸騰中。そもそも学校一の美男子たる雪と隣同士に立てば美形同士様になり過ぎるんじゃないだろうか?とか思う俺も、これまで隣の席であるのを何度か男子に羨ましがられたり席を交換してくれと言われたりしたけどなんだかそれが癪に障って以来一切断っている。(因みに俺から見て斜め後ろの席、彼女からは真後ろの席に着く花村にも一度頼まれた。必死すぎて逆に引いて、その時は思わず回し蹴ったけど後ろの席も普通に良い席って奴なんじゃないのか?と今の俺は思うがそうでもないらしい。花村曰く背中しか見れないから、とか)

(あ、美形と言えば後輩の直斗くんもかなりの美少年だよなぁ…最近雨の日の図書室でよく二人でいるの見るって聞くし。本とか読むとすぐ寝ちゃうから俺はあんまり行かないけど)

つらつらと考えて、思考があっちに行ったりこっちに行ったりと我ながら本当に忙しない。
授業は退屈だしそもそも内容が頭に入って来ないし、東雲さんか雪にでも頼んで後でノート写させてもらおうと勝手に決める。花村は例の如く役に立ちそうにないから。

…で、兎に角、東雲葵と言う一人の女生徒はそれだけ周りに与える影響力と言うのが凄いと言うこと。けど周りの殆どが彼女の外見ばかりを見ていて内面を知ってなんかいないんだとも思って、ちらりとまた隣を盗み見ればそこには、真っ白く透き通るような頬に長い睫毛を軽く伏せて教師の説明をきちんと要点を押さえて書き留める東雲さんが当然だけどいて、俺は、此処最近彼女を見る度に胸の辺りがざわりと波立つように感じることにそっと唇を噛んで耐える。

好きになるか嫌いになるか。
それで考えれば俺は間違いなく彼女が、東雲さんが好きなんだろう。そしてもしかして、もしかしなくても、単なる友達以上の思いを俺は…抱いてしまってる。色んな意味を含んで俺を変えてくれた人。俺の弱いとこも俺の情けないとこも全部ひっくるめて受け止めて認めてくれた異性だから、それを思うととくとくと鼓動が少しだけ速まっていくのが分かった。

けどそれを口にするのも認めるのも内側にいる俺はなかなか出来ずにいる。それは周りの男みたいに同じく俺が彼女を見る目が汚れてるように感じてしまうのが少なからずあるから。
最初は男同士と思ってたから気兼ねがなかった。女の子だと分かってからは少し戸惑った。でもまた前のように接して欲しいと他ならぬ彼女に言われて、その時は俺自身小さな棘が抜けたようにスッキリしていたけど思いが知らぬところで募って行く内に苦しくなって来た。彼女にしたら俺は、花村や雪や仲間の皆も全員含んで大切な仲間で友達でクラスメイトで一年間だけの同級生で。詰まるところ異性とも思ってすらいないんじゃないのかって言う話。
或いは彼女は男子の間で交わされる会話を知っていて俺達だけにはせめて普通の友達を望んでいるのかもしれない。彼女の口からそう言った言葉を確かに聞いた訳じゃないけれど、馬鹿な俺はそうやって変に勘繰ってしまう。つくづく嫌になるけれどこれが元の性格だから、まぁ仕方ないと言えば仕方ないか。

だから俺は、臆病にもその一歩が踏み出せない。

(綺麗な、とても綺麗な東雲さん)

ぼんやり、授業机に肩肘を突いて横顔を見つめる。それがあからさまな行為とは最早忘れてただひたすらに見つめてそして。

(もし俺がきみが好きだって言っても彼女ならきっと拒否なんてしないんだろうな)

こんな事まで思ってしまう。けど、だって、その心根がとても優しいのを俺は知ってる。彼女は、俺の影を認めてくれた人だから。俺だけじゃない、勿論捜査隊の仲間達全員の抱えた闇を彼女は全部頷いてくれて、その温かい心に触れてみればいっそ涙すら出そうになった。だから、こんな答えが簡単にシュミレート出来てしまう。(でも恋人なんて言う甘い関係にはなりそうにもないけど)

好きで、好きで、好きで仕方なくて。嫌いになるだなんて到底出来そうにもない、俺の片思い。だから俺は君が望むならずっと『いい友達』でいるって覚悟はもう出来てるんだ。告白して、受け止められて、でも少しでも困ったような顔をさせてしまうくらいなら俺はやっぱり俺を受け止めてくれたあの笑顔を曇らせるくらいなら口を噤んだままで、ただせめてテレビの中にいる時くらい守っていようと決め、て………あ、ヤバ…考えすぎて頭こんがらがって来た。…これって凄くダサくない?てか確実にダサい…しかも頭使ったから変に眠気が。
うと、と瞼を閉じ掛けた視界にぼやつく影。幸い、授業を担当する細井の目には止まってないみたいだけど…これってもしかして。



「…しののめ、さん…?」

「…里中、さっきからこっち見てどうしたんだ?眠いならあと十分くらいで終わるし寝てて良いよ。ノート気にしてるなら後で見せるし」

「え、」

そっと、今まで盗み見るようにしていた筈の人が此方を見つめ返していた。そして苦笑混じりにいつしか机に突っ伏していた俺の明るく染めた茶髪に触れてはにかんだ。

(…どうしよ、ホントマジに、きれい…だし、かわいい)

「最近の里中、テレビの中で頑張ってるの知ってるよ。だから疲れてるんだろう?」

…いえ、それは邪念を払う為とか、君を守りたいからとか、その為に力を付けようと思ってとか、そんな理由からなんですよ。と思っても、髪に触れた手があまりにも優しくて、耳に届く潜められた声が柔らかくて、それとなく前後と斜め後ろの席から感じる特殊な気配に背筋は力が抜けつつ少し冷えたりして本当に曖昧な顔と反応しか返せないけど彼女がそんなところまで自分を見てくれてたのが嬉しくてさっきまで馬鹿みたいに悩んで頭を痛めてたのが少しだけ気が晴れたようで微かに頷いた。(これくらい、今だけは良いよな)





君が望めば俺はずっと友達でいるよ。でも好きと言う気持ちもずっと変わらないよ。
ただ全部黙ったまま、俺は、友情と愛情のギリギリのラインの上で切ない綱渡りをしてる。それだけ。
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2008.11.28(Fri)





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