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author 米 [write]

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触れない指先


(花主前提影村主)

とある日に見た夢の中で、俺は東雲を殴っていた。最高の仲間であり最愛の恋人である、これから一生伴侶のように連れ添うと心に決めたその相手を、俺は、この苦無を握っていた手で拳を作り怯えるように咽び泣いた東雲を力いっぱい。殴った。(夢なら覚めてくれ!)とその瞬間俺はたゆたう意識の片隅で精一杯、もう一人の自分に向かい叫ぶ。叫ぶ。叫ぶ。
だが、結果はそれすら空しく俺はただいつの間にかくたりと力なく床に倒れ伏した東雲の姿を見つめるしかなくて、内側から窓の外を覗き見るようなことしか出来ない現状に歯痒さを味わうばかり。そしていつしか俺は指一本すらまともに動かせず浅い呼吸を掠れるくらいにしか繰り返さない東雲の灰色の髪を無遠慮も過ぎる荒々しさで鷲掴んで身体を起こさせ、血の気を失せ白さを通り越したシャープな線の顔に顔を寄せた。(やめ、ろ。やめろ。やめろよ。やめてくれよ、俺は、)(おれ、は。)

『お前は俺だけ見てればそれで良いんだよ』

誰かに視線をくれてやるのも、誰かに見つめられるのも、誰かをその視界に映しじっと眺めるのも。その声を聞かせるのすら、例え喉を潰してでも自分のものにしてみせる。自分以外の声を聞くなら耳を削ぎ落としてやろう。だから、逃げようなど思うな。誰かに縋ろうとか助けを求めようとかそんなことをして見せれば命すら奪う。手も足も立てないように伸ばせないように腱を切って。

『なぁ、あおい。そうだろう?』

俺は意識を混濁させている東雲の、散々に殴られて所々青くなったり赤くなったり兎に角変色しきった頬に触れさらりと掛かる髪を撫で落とすと冷気の所為か血の気を引かせた所為か、氷のように冷えた耳元に呪詛のように低く甘く囁いた。けれどいつもの輝きを失った銀灰色の双眸はただただ暗くまるで水底にいるようで、その視線を俺に抱かれながら何処かへと投げ掛ける東雲は何故だか、此方を、俺自身をぼんやり見ている気が、した。
ひや、り。(あ、ぁ、…嗚呼)

( よ う す け。 )



白い指先は、力なく俺に伸ばされている。
俺はそれにすら、触れられない。
だからお願いだ。お願いだから。

(夢なら、早く覚めて)
(俺はこんなこと、望んでなんか)
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2008.11.27(Thu)





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