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author 米 [write]

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海原の人魚


(人魚姫パロ)

ぱしゃりと波を打つ音がして目が覚めた。開けた視界に映る空は白みを帯びた清々しい快晴で、それを暫し見上げながらぼんやりとした頭を抱えてむくりと上体を起こせば、そこにあったのは眩いくらいの銀、否、灰色で。
水平線の向こう側から顔を覗かせ今や燦々と光を振り撒いている太陽の輝きに煌めいた灰色は、打ち寄せる波に濡れてまるで水晶を砕いて散りばめたように綺麗で目を奪われた。

(あ、)

こんなにも美しいものがこの世にあったのか。目を奪われ心を奪われ動く力も掛ける声すら奪われて、ただ見つめるしかないこの身体。日に当たる事がないのか透けるように白くしなやかな曲線を描く背中が振り向いて、その灰色に隠れていた容姿が顕になる。しとどに濡れて滴を伝い落とす頬は泣いているようにも見えた。
けれど息をも殺して見つめた双眸に彩るそれは髪と同じ、それ以上の美しさを湛えた銀灰色で、緩く瞬きをして見せたその一瞬の動作に既に這い上がれぬ海に落ちていたのだと俺が気が付くのは。間もない。

「お前が助けて、くれたのか」

突然の嵐に見舞われ投げ出された海の中、長いこと寒さに晒された腕は鉛のように重たく、それでいて感覚は鈍い。けれど伸ばしたそれに逃げる様子もなく思いの外容易く触れる事の出来た肌に左胸が何かを甘く囁いた。

「ありがとう」

ありがとう、助けてくれて。
ありがとう、お陰で俺は君に恋をする事が出来た。
ありがとう、どうか助けてくれたついでに一緒にいてくれないか。



(王子は人魚に恋をした)
(人魚は密かに王子を恋していた)
(二人がその後末永く共に暮らしたのは、また別の話)
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2008.11.27(Thu)





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