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author 米 [write]

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純粋者禁猟区


(影村と影主)

入って来るな、と声がした。顔を隠すように腕を交差し小さく膝を抱えながら蹲るその姿はとてもじゃないが、同じくらいの体躯をした存在だとは思えず腕を掴めば放せ、離せと掠れるような、それでいて耳を塞ぎたくなるくらい悲痛な叫びが俯く顔のパーツから吐き出されて俺は空気に霧散するその声に逆らって尚更腕を強く繋ぎ止めた。腕は細く、まるで骨と皮だけのように肉付きが少ない。精一杯の力を虚勢と共に張る灰色は、表の世界を太陽の陽に照らされて駆ける『自分』の目を通して見ていた事があるがまさか『それ』の中にも俺と同じ存在、或いは近いしい者が内側に隠れていたとは思わなかった。何故なら『それ』は切っ掛けを得ず力を手にしていたから。否、切っ掛けはあったにせよ『中』に入る方がそれより先で、向き合う事もなく得た力はあまりにも強大で、異質で、いっそ畏怖を抱いて目が眩む程で。光があれば影が差し、表があれば裏があるように、何事も二つの何かが背中合わせに鏡を立ててそこにあるのだが。それはいないのではない、存在してない訳ではない、ただひっそりと水面下で眠るように息衝いていた。それだけの話。それだけの事。肌はまるで冷たいけれど、その肌と髪とが湛えた容貌の色艶も喚く声の引きつる音も半分に割った命の尊さも俺と同じ内側の者とは思えぬ程に清らかだった。

なぁ、どうしてお前は此処にいる?そう問うたのは果たしてどちらだったか。色も音も命の気配も温もりも、世界の意思すら阻み拒んだ異次元の中、ただ水滴が何処からか雨のように一つ降り落ちて、細やかな波紋を柔らかく広げた。

「俺と行くか」

答えはない。けれど掴んだ腕は既に抵抗を失い温もりは冷めたまま。俺はそれすら構わず一人勝手に身を寄せ合った。

(俺は、一人にしない。)

何故なら俺達は内側に溶け残され見放された孤児であるからだ。
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2008.11.27(Thu)





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