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author 米 [write]

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見ないふりをしてる


(時間軸:四月、テレビの中)

山野アナの変死事件に引き続いて三年の小西先輩が亡くなった。
死因は当時議員秘書を勤めていた生田目氏との不倫を報道されていた山野アナと同じ。最初の事件は民家のアンテナ上だったのが今度は電柱に逆さでぶら下がった状態で発見され、犯人逮捕はおろかその手口や動機すら解明されていない。

けど東雲が転入して来た翌日、俺は東雲と里中と一緒にジュネスのフードコートで話し合った真夜中に映るテレビ番組を試す事になった。映ったのはぼんやりして不鮮明だったけど同じ年頃の女の人だったと思う。
その翌日にはまた三人でジュネスに行って、少し話したあと里中が買い換えたいと言っていたテレビを見に家電売り場に足を運んで、何故か東雲がテレビの中に手と身体を突っ込んだの見てかなり驚いた。一瞬手品かと思ったけど明らかに水面に手を入れてるみたいに静かな波紋を広げてる真っ黒なそこに、中の様子まで冷静に伝えて来る東雲が逆に怖くてビビりすぎて騒いだ結果馬鹿みたいに三人一緒でその中に落ちちまった。

その中で見たものはその時は全く理解の追いつかない不可思議な世界だった。濃いスモークみたいな霧に包まれたスタジオみたいな広場に顔の切り抜かれたポスターが貼られて自殺を仄めかすような赤い布で作られた輪っかの垂れ下がった妙な寝室。クマとか言う変な生き物まで出て来て訳の分からない目茶苦茶な事ばかり言ってたけど、その更に翌日事件は起こった。

小西先輩の、突然死。

転校して来たばかりの頃、周りに色々言われてた俺を優しく励ましてくれた先輩に俺は気付かない内に憧れてて、恋をしてた。けどそれを伝える時もないまま、先輩の本音もあの人の口から聞かされないまま、呆気なく亡くなってしまった。
少し前まではジュネスでバイトをしていて学校にも通っていたのに、普通に昼を過ごして夜が明けて朝になったその時には、あの人はこの世界から綺麗にいなくなってた。死ぬと言う形で。そして誰かに殺されたんだと分かったのはあのマヨナカテレビに二回目映った時、何か得体の知れない物から逃げて藻掻き苦しんでるような雰囲気を思い出したから。

全校集会で校長から知らされた突然の訃報に全身から血の気が引くような気がして、集会が終わった後にはぼんやりする頭とは一方に東雲と里中を呼び止めて自分なりに考え纏めたことを伝えた。里中は信じられないとばかりに目を見開いて戸惑っていたけど、東雲は俺の話に真面目に耳を傾けてくれて頷いてくれた。それが嬉しいのと同時にまた俺の中には確かめたいことがあって、クマがいたテレビの中に行きたいと告げれば里中は猛反対。その反応は大体予測はしていたけれど、東雲は俺の話を最後まで聞いて里中の様子を見た後、里中を危ない目に遭わせないならついて行くと言って同意した。
とは言え俺一人であの中にマジで行けるとは思ってなかったし、東雲がいなければあの時もきっとあそこには行けなかった。だから実際は東雲に協力を仰がなくちゃどの道目先は開かれないから、その時は期待半分絶望半分だった。

「…悪いな、ホントマジ…お前にまでこんなこと付き合わせちまってさ」

「いや、花村が事件を気に掛けるのは無理もないことだと思う…寧ろ色々有りすぎて、今回一番疲れたのは逆にお前だろう?」

「…ハハ、冷静な奴だな」

「これでも一応混乱してる」

「マジかよ」

あれから、俺と東雲はジュネスの家電売り場からまたテレビの中に入った。今回は一応武器になりそうなモンと薬を持って、腰には命綱なんて言う自分なりの武装をしてみたりして(けど命綱は先っぽを預けてた里中との間にいつの間にかあっさり切れていた)、けど実際俺には何も出来なくていきなり現れたシャドウとか言う化け物を退治したのも、ペルソナとか言う力を出したのも東雲でそのときはただただ驚くしかなかった。
そして死んだ小西先輩にとっての現実だと言うその『世界』の一部で見たもの、聞いたもの、感じたものを俺は信じられず、同時に動揺する心に追い討ちを仕掛けるように現れたもう一人の俺―俺の心の内に潜んでいた影―に胸中は更に波を立てたように荒れた。その時も俺を助ける為に立ちはだかってくれた東雲がそのシャドウとか言うのと戦ってくれて、ただ見ているしかなかった俺はその光景と時折交わされる会話を耳にしながらいつしか腰を抜かした格好で強く拳を握っていた。それは、傍から見たらなんて情けない姿なんだろう。けど戦いの終わった後で俺は同じ顔をした影もまた『俺』なんだと自覚して、まだ少し受け入れがたく思っていた蟠りのようなそれを東雲の言葉によって背を押されて認める事が出来た。
小西先輩は自分から生まれた影を認められず殺されて、でもそうされなきゃいけない謂れなんて本当なら何もなかったのに。あの人をこの世界に落とした犯人を見つける為、そしてもう被害者を出さない為にも俺は自分の影を認めて手に入れた力で戦う事を決めた。

テレビを出た時に里中が大泣きして怒ったのには流石に悪かったと思ったけれど、漸く一つ解き明かされた謎にその日は久々にゆっくり眠れそうな気がして、東雲と別れるまでの帰り道色々な事を話してた。
すっかり暗くなってしまった辺りを点き始めた電灯と薄暗い中に光る星空を頼りに歩いていると、忘れそうになってしまうけど本当は今日一番疲れて傷付いてるのは東雲なんだと不意に思う。白い頬が少し擦り切れて汚れて下ろしたての制服も何処か埃っぽくなっていて、パタパタと払う度に煙たい汚れが出て来て膝も剥けていた。それなのにクマから貰った眼鏡を大事にしまった鞄を手に表情は変わらず凛としているが妙に可笑しくて思わずじっと横顔を見入る。同性とは思えないような小綺麗な容姿、色素が薄くて灰色に映る髪、同色で更に光を足したような美しい輝きの目にただただ見入られるばかりだ。

(同じ都会から来た奴なのに)

ぼんやりと疲れた頭は無意識の内にそう思ってしまっていた。けれど当時の俺にはまだ自覚が薄すぎて、どうしたんだと首を傾げて問い掛けて来る東雲の銀灰色の双眸に肩を跳ねさせるままその時は何でもないと首を振るった。



見上げた紺碧色の広がる空は、とても静かだった。
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2008.11.27(Thu)





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