the latest //  案内・作品一覧


author 米 [write]

スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--.--.--(--)



ふれて、生きて。


(11月の主人公と菜々子)

久し振りと言う訳ではないのに触れた少女の手はやけに小さくて、その小ささと温もりに懐かしさを覚えた胸はツキンとまるで針を刺したように痛んだ。
温もりの僅かな指先は一緒に夕焼けの帰り道や買い物に出る度に繋ぎ合っていたあの頃と一寸足りとも変わらず滑らかで、子供特有のぷくりとした肌の触り心地がとても良かった。
その反面で蝋燭に灯る火のようにごく僅かな体温に言い知れない悔しさと悲しさが胸に広がって、こんな時にすら何も出来ない自分の力のなさに不甲斐なく思ってしまうのは誰だって仕方ない事だと親友が言っていた。けれど。

華奢な白い手。淡い色の爪が飾られた指先。力なくベッドに伸ばされたそれに、そっと触れ合う。その度に。
手を差し出せば互いが互いに自らの手を絡めていたあの頃は、思い起こせばとても煌々と輝いていたのかもしれない。だってこの幼い手を握り合えば、温もりを感じれば、自然と強くなれた。自分はひとりじゃないと分かり合えた。目の前の少女とその父親が孤独だった自分にとって何より掛け替えのない人間なのだと気付かされた。

「おにいちゃん…」

まるで鈴が鳴るようなか細くて、可愛らしい声。優しく呼ばれる度に胸を熱く焦がして、辛いのに柔らかな笑みを向けられる度に込み上げそうになる涙。けれど外に出られなくなった少女の代わりに身の周りのことを話すと希薄だけど楽しそうにする表情には安堵していた。

「…菜々子、傍についてるから」

だから君は消えないで。
その小さな命を諦めないで。
守りたくて、守れなくて、無力な俺にはこうして祈るように縋るしか出来ないけれど。細やかな幸せを沢山もらったのにそれを一つ足りとも返す事が出来ないままなんてそんなの嫌、だから。

華奢な左手を両手に包んで絞り出すように呟けば手中で微かに指先が動いて、顔を上げれば少女は呼吸器越しに淡くはにかんだ。

「菜々、」

「…おにいちゃん…大好き」

まろやかで優しい少女の声に、熱くなった目頭が今度こそ涙を込み上げた。

(どうして、どうしてそんなにも君は慈悲深いの。どうしてそんなにもまっさらなの)
(お願いだから、強く生きて)
スポンサーサイト

2008.11.27(Thu)





/
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。