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author 米 [write]

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守るための腕が欲しい


(捜査隊→主前提花主)

堂島さんが事故に遭って菜々子ちゃんが誘拐されて、東雲は日に日に憔悴していった。
時間があれば東雲は毎日でもテレビの中に入ろうとして、その都度、戦闘で負った傷の治療を振り払ってまで先に進もうとする姿はまるで普段の冷静さを欠いていて見てられない。反面ではそれだけ冷静さを失うくらいにあの家族が大事だったんだろうが、リーダーを任せてる東雲自身があんな風じゃ男は兎も角、連日連戦続きで体力的に劣りの目立つ女子メンバーは休めたもんじゃない。

いつものアイツならどれだけ先を急ぐ時でも万全の態勢を整えて戦いに望んでいたし、無茶な戦法は取らずにその時々によって的確な指示を飛ばしていた。
痛手を負えばそちらをカバーしながら治療をして、無理だと分かればその日の探索は終了。お陰で俺たちは次の日に響くような事態には至らず、いつだって安心して東雲の指示に従えていたし信頼も厚くしていた。けど、今思えばそれがどれだけ東雲に頼りきっていたのか、現在になって強く知らしめる事になってしまった。

(先に行かなくちゃ。あの先にあの子が待っているから)

まだ小さい菜々子ちゃんを逸早く助ける為にと必死になる余り、ついに東雲は今まで探索の方針に口出しをしなかった俺たち全員に止められてその日一日だけはゆっくりと休むよう言われた。

(どうして、早く助けないと、菜々子を見捨てるのか。あの中で怖がっているあの子を無視するのか)

探索を止められ咽び泣くような悲痛さを帯びた声を張った東雲は、アイツらしくない卑屈な態度を晒してからすぐに項垂れた。そしてただの口上に過ぎないすまないと呟く声に、今まで東雲の口からそんなマイナスな類いのセリフを聞いた事がなくて俺たちは息を詰まらせたけど、東雲はそれだけのものを今までも、今も、変わらずに抱えていたんだと気付かされて酷く悔しかった。

(分かってるよ。分かってる、みんなお前と同じで一刻も早く菜々子ちゃんを助け出してやりたいって思ってるよ。けどお前がそんな状態じゃ助けられるものも助けられなくなっちまう。それに女子の天城や里中や白鐘、サポートのりせだって休まないといざと言う時のチームワークが活かせない。誰も菜々子ちゃんを見捨てたりなんかしないさ。お前の大事な家族を、俺たちは必ず助けてやるんだから)

項垂れた東雲は何も言わずただ焦点の定まらない暗い目で、肩を掴んで言い聞かせる俺の言葉に瞬いた。悲痛な面持ちを浮かべた天城たちに断りを入れて、俺は道路沿いにある自分の家とは少しだけ遠回りになる東雲を家まで送ることに決めた。
実はどちらかと言えば家が近いのは完二の方で最初自ら名乗りを上げてくれていたけれど話したいこともあったし、何より放って置けない気がしたからそれは断った。顔色の悪いを通り越して色が全くない血の気の引いた東雲を連れて校舎の屋上を降りると、薄く雲の張った空にちらりと目が向いて雨が来るかもしれないことを密かに危惧した。口に出さなかったのは、項垂れたままの東雲が腕を振り切って一人で勝手にあの中に向かうかも知れなかったから。信用していない訳じゃないけれど今のこいつなら単身乗り込んで行きかねない、そんな気負いを間違いなくしていそうだったから。

最近じゃ学校の授業内容も全然頭に入ってないんだろう。普段から成績が優秀なだけにぼんやりしてる姿も教師から多少の大目として見てもらえているらしい東雲の荷物はとても軽くて、一応形だけ持って歩いてるだけなんだと何気なく零れたその理由を辿ればちくりと胸が痛かった。
片手には二人分の荷物。片手には親友兼相棒の手。まるで東雲の生を繋ぎ留めるみたいに俺は必死で、陰って来た空の下で表情を失くした東雲の真っ白な横顔はあまりにも生気が虚ろだったことに尚更この手を離せない。離しちゃいけないんだと強く思う。

(なぁ、東雲)

どうして俺はこんな大事な時にばっかり、お前の役に立てないんだろう。お前は俺を、俺たちを、この町に来た時からずっと助けてくれてたのに。俺はお前にすっげぇ助けられたよ、救われたよ。精神的な意味でも命の瀬戸際に立った時も。最初自分の中にあった影を受け止めきれなくて必死に否定してた時、お前が俺を庇うようにして戦ってくれて、それを見てるしかなかった弱い俺がお前の言葉に背を押されて『勇気』を持てたこと、それも自分であるのを認めると言うこと、影って言う内面もあるから人は人なんだと理解して、そう言う色んなことを気付くきっかけにお前がなってた。お前がいたから俺は今こうして地に足つけて生きてられてる。
お前の力は、本当に凄いんだ。だから俺もお前ほどの凄い力はないけどお前の支えくらいにはなりたいって思った。お前が悩む時には話を聞けるくらいの強さを持ちたいって思った。でも結局のところ俺はお前の力にも支えにも頼りにもなれてないって分かって、けどそれを言えば優しいお前は今みたいな顔でもそうじゃないって否定してくれるんだろうけど、俺はそれを薄々勘付いてたのかも知れない。無意識下の思念、とでも言うんだろうか。
お前には昔から家族との繋がりが希薄で、家族ってのがどんなものか分からないって言ってたよな。けど此処に来て、あの家に来て、家族がどれだけ温かくて優しいものか分かったって言うのも言ってたよな?でもそれはお前があそこにいたから、あの家族の中にお前って言う存在が出来たから、二人はいつだって楽しそうで、堂島さんの凄みのある怖い顔だってすぐに和らぐし、奈々子ちゃんだってまるで花のような笑顔でお前をお兄ちゃんだなんて呼ばないだろう。お前はこの町に来てあの家族の絆を繋げただけじゃなくその絆の中にお前自身含まれていたのに気付いてないんだ。俺たちの、仲間の絆みたいに。

みんながみんな、お前を心配してるんだよ。お前がそんな様子じゃ自分の代わりに奈々子ちゃんの無事を託した入院中の堂島さんにも、お前の助けを恐怖に耐えながら待つ奈々子ちゃんにも、お前のことを信頼して進んでく俺らにだって、信じることが出来なくなっちまう。だからいつもみたいにお前がしっかりしてくんなきゃ、俺たちは前に進めない。ペルソナなんて力があっても俺にはお前自身の心を助ける力が欲しくて、でも出来るのはこれくらいなもんだから、さ。

いつの間にか厚くなった灰色の雲からはごろごろと雷が鳴り出して、それを聞いて肩を微かに揺らした東雲に強く手を握り締め直すと銀灰色の目が持ち上がって落ち着かせるようにゆっくり笑ってやった。思わず目を揺らして呆けた顔をする東雲にしてやったりとばかりに口角を上げると、気付かぬ内に近づいた一つの家屋に雨粒が落ちて来るよりも早く駆け込んでそのまま暗くて狭い玄関に溜まった冷えた空気に身体が震えないよう、そっと抱き締めた。

「花、村」

「大丈夫だ。俺は、此処にいるから」

ちゃんと、お前を抱き締めてるから。

「…っ」

「だから、今は怖がらなくて良い。けど、それは泣いちゃいけないって訳じゃない、辛いんなら、本当に怖いんだったらそう言う時は…大声上げても、泣いたって良いんだぜ」

「……陽介…っ」

そう言いながら、制服越しに伝わるお互いの体温が酷く恋しくて俺自身泣きたいくらいだった。けど此処は俺が我慢して、こいつを泣かせてやらなきゃ。溜まったもんを目いっぱい吐き出させてやらなきゃ治る傷だって治らない。身体も、心も、傷を負えば同じように痛いし同じように苦しいんだから。
背中に縋りつくように回された東雲の手が小刻みに震えてやがて小さい嗚咽を漏らした。段々と大きくなっていくそれに玄関の段差に座ると釣られて東雲の身体も倒れ込んで、俺はずっとそれを抱き留めて支えながら柔らかい灰色の髪に耳を塞いでやるかのように顔を埋めてひたすらに名前を呼んでいた。

(大丈夫。俺はお前を一人にしない)
(俺にはちっさい力しかないけど)

「…なぁ、必ず守るから。また、前みたいに笑えよ」
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2008.11.27(Thu)





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