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author 米 [write]

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優しさのかたまり


いつだったかクマはよく東雲を優しいと呼ぶ。それはクマに限らない事だが、確かに東雲は誰にでも分け隔てなく優しくて、あからさまでわざとらしいソレじゃなくて、そっと柔らかく世界を包み込む空気みたいな、自然とした優しさの持ち主。
綺麗な雪みたいに白い容姿に綺麗な灰色の髪と目が誂えられて、まるで一見したら人形みたいな存在感なのに東雲はちゃんと呼吸をしてるし食べてるし勉強だって真面目でそれで時たま綺麗と可愛いのくっついた笑顔ではにかむように微笑する。だから東雲は人形なんかじゃない、こんなにも人間味に溢れて人を惹きつけてやまないものが無機物である筈がない。俺はそんなことを最初思ってた俺を殴ってやりたいくらいだけど東雲が俺の話を聞いてくれて相槌を打ってくれる度、俺の為に普段落ち着いた声を荒げてくれるのを見た時、少しだけ悲しそうに目を揺らした時不意打ちだけどキュンてした。俺を抱き締めてくれた、刃物を振るう筈なのに細いままな腕と薄い胸に感じたゆっくりした鼓動を聞いた時も。

(あ、俺こいつが好きなんだ)

って。今まで先輩を亡くした事をズルズル引き摺ってそれを東雲に聞いてもらってたくせに勝手なもんだ。自分でもそう思う。けど。

「花村?」

「ぅおっ?なんだ東雲、どうかしたのか?」

「あ…いや、何だか考え事してたみたいだから…また何か悩んでるのかなって」

徒歩での下校中、気が付けば隣りの東雲が心配そうに顔を覗き込んできた所為でまた心配掛けちまったのかと苦笑い。けど触れた額の手が気持ち良い冷たさでそう言えば手の冷たい人は~と言う迷信が昔はなんでか知らないが流行ったもんだと思い出す。
東雲の、手。そっと掴んで繋ぐとびっくりしたように目を丸くして俺と手を交互に見下ろ姿がいつになく年相応だった。

「は、花…っ」

「へへっ、恋人繋ぎ!なんつって、どうよ」

「ど…どうよって…」

「んー…ときめいちゃったりしない?東雲は、俺に…さ」

「はぁ?!」

「うっわ、そのあからさまな答えが切ねー…」

「だだだってお前がいきなり、」

「…けど、俺は此処最近毎日お前にときめいちゃってるけどね」

「え。」

もうジューショーだよ。
誰にだって優しいお前があの時だけは俺だけを見て俺だけの声を聞いて俺だけの為だけに優しくそっと抱き締めてくれた。
気が付けば俺は東雲を俺の中の特別にしていて、同時に東雲の中の特別にして欲しいなんて願ってた。あの家族しか入れないような、東雲の大切な領域に。

だからそれが出来なくてもその分アタックはオブラートに包まない。以前は完二を馬鹿にしてたけど、馬鹿に出来なくなって気付いた。男が好きなんじゃない、たまたま男に生まれた東雲 葵が俺は好きなんだ。
手のひらと手のひらを貝合わせみたいに繋いだ所謂恋人繋ぎの手をぎゅっと握り締めて、東雲の低めの体温と俺の平熱っぽい体温が皮膚の境で溶け合うのが地味に嬉しかった。横を見れば暮れてく太陽の光とは関係ない頬の赤が目について、もしかしてと勝手に解釈して期待するのも…まぁ、これは恋する男の特権って事で。

「っ東雲、好きだー!!」

「ッ!ばっ…馬鹿、なに言って」

「あだっ!!」

「っうわ…!」

鮫川の土手上から河原に向かって叫ぶ。勿論手は繋いだまま。
いきなりのことに慌てた東雲が自由の利く方(つまり荷物の詰まった鞄を持つ手)で勢い良く後頭部を殴った所為で俺は夏草がまだ生い茂る坂を転がり落ちて、繰り返すが手をがっちり繋いだままでいた東雲本人まで引っ張られて転がったのは、幸い人気のない時頃で助かった…のかもしれない。多分。



(けどきみは優しさで出来ているから俺を否定しないだろう。俺を無碍に出来ないのなら、俺は狡賢いと言われても手段なんか選ばずにきみを追い詰めるだろう。だから)

「覚悟しとけよ、…葵」

転がり落ちた土手から仰向けになって見上げる空は、以前の光景にデジャブした。
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2008.11.27(Thu)





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