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author 米 [write]

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なぞる痕


夢を見ていた。
思い通じ合った佐伯が私から離れていく夢を。否、これこそが現実であるのかもしれない。嘗て繋がりの限り無く薄いあやふやな契約を結んだ彼に私が成した様々な凌辱の跡を思えばこそ正しいのは現実ではなく先に見た夢の中身ではないのかと。
夢では、同性である私に無理矢理強いられた絶対服従の快楽は彼を果てない絶望の淵に貶めていた。声が嗄れてしまうまで泣き喚く彼は止めどなく溢れる涙を目隠しに当てがわれた布地に吸い取られ意識を逃避する事も出来ぬまま、望まぬ解放を咥え込まされた医療器具によって促され、拒否する声も虚しく果てた。しかし脱力し顔を青白くさせている彼の様子に一切構いもせず下肢の蕾に私は楔を穿ち、質量も熱も感触も何もかも全く異なる私の雄に揺さぶられる彼はただただ哀れなほど引きつった声を壊れたブリキのように漏らしている。
紙のような白さになるまで強く掴んだシーツに絡む指先は襲い来る痛みと沸き上がる屈辱に必死に堪え、苦しみ嗚咽して全てを早く終わるようにと願いやり過ごそうとしていた。(たすけて)その時私は彼の心からの叫びを聞いた。そして心臓が鷲掴まれたようなショックを受けて目が覚めその一瞬前に私ではない誰かの名前をひたすらに呼び続ける彼の声なき声が頭に響き全身の毛穴から汗が吹き出すのだ。
私が彼にした事、それは本当にどうしようもなく償い切れない重さの罪だ。思うが侭その身を蹂躙し弄んだが実の所ではその場凌ぎの咄嗟に出た口約束から来た契約など私は端から軽んじていたのに、それでも、それでもと一抹の希望と願いを胸に抱いた彼はいとも容易く踏み躙られ好きにさせられ。嗚呼、こんな私をあの時どうして愛せたと言うのか。彼はきっと畏怖から来る情を錯覚し履き違えているのだ。本来ならば植え込まれた暴力と荒々しい快楽に恐怖し怯え今にでも逃げ去りたい程そう思っているだろうに。彼を見て嗜虐と庇護の相反する情にそそられる私を愛するなど、そもそもある筈がないのだ。
私の腕の中で彼は笑う。幸せに満ちた、穏やかで健やかな表情で。慈愛を感じさせる柔らかな声が私の名をぎこちなく紡ぎほんのりと染められた白い頬は目許を緩めて撫でる手に擦り寄る。求め合うように伸ばされた腕の温もりすら、本当は夢だったのかもしれない。(克哉)私が呼ぶ声にゆっくりと振り返る彼の表情が、今の私には見えなかった。きっと微笑んでくれているだろう彼の横顔を塗り潰すような闇が現実か夢かを曖昧にさせて。

(克哉、克哉)(孝典さん)

私を呼ぶ甘い声すら、もう。
嫌疑に掛ける他、ない。


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2008.07.03(Thu)





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