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author 米 [write]

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お嫁においでハニー!


(がっつき気味完♀主)

(先輩!将来俺のお嫁さんに来て欲しいっス!…なんて言うにはまだ勇気が少し足らないけど、この思いは他に負けません)

並んで見ると改めて分かる身長差。さり気なく抱き締めてみた時に感じる肩の小ささ、細さ。体脂肪が殆どないに等しいくらいの肉付きが薄い身体の、唯一ふくよかな胸越しに聞こえる心音。この薄い皮膚の下には彼女の生きている証を示す血が全身に根を張って伝わっているのだと思うと、女特有の柔らかな丸みを帯びた身体が温かなぬくもりをこの手に知らせる事に俺はそれだけでこの上ない幸せを感じる。だのに、この一つ年上の人はあろうことか俺の肩に白い手を触れて小さく声を掛けて来たものだからつい自分が無意識にした事に今更ながら気恥ずかしくなった。

「完二?…どうかしたのか?」

いつも物静かで落ち着いた雰囲気を醸していてもやっぱり生まれ持った性別の為か、流石の先輩もこんな時ばかりは声質の中に僅かな戸惑いを滲ませていて、それでも俺のいきなりの抱擁に荒っぽく引き離そうとしたりしないのは元の大人しい性格からか若しくは俺を信頼しての事か。透き通るように耳に染み込む綺麗な声は間近に寄せ合った距離でいつも以上にしっとりとした響きを孕んで優しい声音のまま俺の心に触れてくる。

女と知れてからも変わりない彼女の制服スタイルは、白い半袖のシャツにスラックスのまま。たまには女の子らしくスカートでもどうですか、なんて言ってみた事はあれどその都度それは差別だと切り返されてしまって、だったら男でも女でも共通して着られそうな服を作ってみたら初めは驚かれたが照れ臭そうに少しだけ、笑われた。白い素肌をもっと白く見せるような真っ白な生地で作られた身体のラインが綺麗に見えるフィット感のある着心地も重視したシャツで、実は裾の脇に少しだけスリットが入っていてさり気なく女らしさもアピールしていたりするのは秘密だが。此処最近外で会う彼女はそれを良く身に着けてくれている気がして、涼しいように大きめに開かせた襟元から見える彼女のほっそりと浮き出た鎖骨と項にじわりと汗が滲んでいるのを見咎めた俺は瞬間、ガツンと頭がやられたみたいに衝動的にそこへ口付けていて、そのとき香った先輩の甘い体臭を胸一杯に吸い込めば驚愕に声を上げた反応にすら対応が億劫で逆に神経がじんわりと侵される気がした。

「ち、ちょ…っ完…!」

「先輩…可愛いっス。なんかもう食っちまいてぇ…」

「な…なっ…何言って……っン」

もしこの世の中にどんなに美しくて芳しい香りを持つ花があったとしても、それでも俺は今抱き締める彼女の纏う甘い体臭に勝る芳香はないだろうと強く思う。まぁそれは日々彼女に対して何の掛け値なしに思うことであるのだが、スレンダーな体型をしている上にまるで透き通るように色白で髪も目も綺麗な灰色をしたこの人はあまりにも無自覚に人を惹きつけてしまうからおちおち気が抜けていられない。これが所謂魔性の色香とでも言う奴か、なんて当人には口が裂けても言えやしないことを頭に浮かべると気恥ずかしそうに長い睫毛に縁取られた目を伏し目にしてほんのり頬を赤らめた先輩の新たな一面に胸が高鳴る。けれど香りだとかそんなことは、やはり彼女が彼女である上ではただの『付属品』でしかないとも思い直す。
少なくとも彼女を愛する自分にとっては、東雲 葵と言う大人びた少女がその形を成しているだけで心を揺らすのだから。

「…て言うか、完二…そろそろ離してくれないか?その、恥ずかしいんだが…」

「あっ、す、すんません!俺、なんか身体が勝手に」

「…。勝手にって…あのな、強気なのか弱気なのかどっちかにしろよ」

声を少し凄ませて解放を促せば途端弾かれたように顔を上げ慌てた様子で身体を離した俺に、先輩は怒りを通り越して呆れたのか、まぁ少し驚いただけで大して気にしてはいないけど…と溜め息混じりに付け加えていた。
けれど俺は、怒られるのが怖いと思う反面で男女ゆえの身長差があり此方を見上げてくる形になる銀灰色の両目にまた懲りもせず誘われるように手が伸びて、窘められた直後にも関わらず滑らかな手触りの頬に触れて顔を勝手に赤くした。
別に真っ向きって告ったりした訳じゃないけど俺が先輩を好きな気持ちと守りたいと思う気持ちに嘘はなくて、先輩もそれについては言及して来ないけどきっと察しはついてる筈。だから近い内俺は改めて先輩に好きだと言うだろうし、もし受け入れられたらいっそ嫁に貰うつもりで一生離さないだろう。いつも俺や俺達が頼りきってる分…いやそれ以上のものをこの人に返せたなら。華奢な肩に伸し掛かる重圧を少しでも軽減出来るたら良い。

「…つっても周りは敵だらけだけどな」

そう、この人は天然だから自分の魅力どころか寄せられる好意にすら疎くて違う意味で危なっかしい。障害は花村先輩と先輩の叔父さんに当たる堂島さん、あと無邪気なフリしたクマ野郎とあの情けねぇヘタレ刑事にこっちはまだ軽い方だが部活が一緒だって言う先輩の同級生辺りも外せない。
小さく漏らした呟きは幸い聞こえなかったらしく首を傾げる先輩の可愛い仕草に頬を撫でた手が熱くなった。女は苦手な筈だったのに、先輩といるといつもこうで仕方がない。

(はぁ…人を好きになるっつーのはこう言うことか…)

「先輩、帰りましょうや」

結局、その日はただ高台に言って少し話したりしたくらいで俺達は何もしなかった。気が付けばさり気なく繋いだ手を引いて、俺は未だ甘い香りを纏わせる先輩を夜になる前にそのまま家まで送りに行った。



(…取り敢えず、叔父さんに了承得るのが先か?)

それより先に実の両親に掛け合うべきなのだがと言う考えは完二になかった。
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2008.11.26(Wed)





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