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author 米 [write]

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今日のわんこ?


(あみぐるみの話)

「なぁ東雲、それどうしたんだ?」

ふと気になって気になって、花村が指した指と視線の先には仮にも高校男子が好んで付けるとはやや思い難い、手編みの感溢れる小さな犬のぬいぐるみだった(この場合手製らしいからあみぐるみ、か?)。薄茶色の毛並みを模したらしいその犬は兎に角素人目に見ても随分と細かい作りをしていてかなり凝っている。しかも首に付けられたオプションには何故かオレンジ色の首輪(後ろの方に細いストラップチェーンが付いている)とヘッドホンのような物が付いていて、まるでどこぞの携帯会社の犬とリスの特徴をくっつけたようだとこっそり思ってしまったのはこの際秘密にしておく。(特に意味はないが)

しかしながら、先にも述べたようにこんな女子の方が好みそうな物を良く持っているものだ、と花村は思う。いや、この東雲と言う同級生兼親友の日頃や人となりを見ていればこう言った可愛らしいあみぐるみを一つくらい持っていたとしても何の違和感も起きないし寧ろかなりキュンと来たりするのだが…(花村主観)けれど流石に女子高生みたいに通学用の学生鞄にちょこんと付けているのは如何なものか。かく言ういきなり問われた当人である東雲は放課後、花村に例の如く連れられて来たジュネスのフードコートで勝手に奢られたバーガーセットに付いて来たポテトを丁度一つ指に摘んで口に銜えたところだったらしく、突然の脈絡ないフリにきょとんと灰銀色の目を瞬かせながら「んー…」と静かに思案し首を傾げた。

「…似合わない、か?」

…いやいや似合ってますとも!しかも同じ男には思えんくらい可愛いとも思ってますとも…!!(花村心の叫び)

普段物静かで表情の変化も乏しく、けれど天然な性格で心優しい東雲は天城とはまた別口の意味で良くボケる。花村よりもよっぽど成績も良くてテストも学年トップはザラなくせ、どうしてこう言う時にばかり無意識に自分を掻き乱してときめかせてしまうのか。的外れな答えはある意味予想の範疇内だったけれど東雲は整った眉を少しだけ中央に寄せて困った顔を浮かべている。正確には、苦笑と例えるのが正しいだろう。
ポテトをもくもくと咀嚼して飲み込んだ後、ナプキンで手についた油分を拭くと東雲は花村の葛藤も知らずに例の犬のあみぐるみを手に触れて撫でる。無駄なものは要れない質らしく荷物の少ない鞄は見た目も薄くて脇の辺りにチェーンが付けられている。そこから犬が繋がれ、今にもふさふさの尻尾が機嫌良くばたつきそうな様子が何故か窺えてしまう東雲は不意に此方を見る花村を少し一瞥するとそっと薄く微笑した。

「し、東雲…?」

「でも、お前みたいじゃないか」

何が、とは言わない。と言うか言えない。寧ろあんまり察してしまいたくはない…気がする。
お前みたい、そんな風にこんな可愛くて綺麗な笑顔であみぐるみを手にしながら花村を真っ直ぐに見つめて来る双眸に告げられてしまったなら。どれだけ。

「実はこの前、完二に一つ作ってもらったんだ。俺はまだそんなに上手く出来ないから…今はまだ菜々子と習ってる最中。上手になれたら花村にも作ってみようか」

………。

「どうする?」

「あ、あー…、うん…。じゃあその時は灰色の猫で…」

「分かった」

…って、完二か!
ついうっかり流された自分がなんだか悔しい、この年の残暑。
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2008.11.26(Wed)





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