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author 米 [write]

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竹取物語 五


(竹取物語)

何はともあれ、わぁわぁと言い争いを続けている三人を連れて克哉姫は屋敷の中へ。
そして人の良い片桐さんは突然の来客にも顔色を変える事なく寧ろ大勢のお客さんが来た事を喜んでお茶を出してくれました。出されたお茶菓子を早速とばかりに太一が手を伸ばせばその年相応な反応を克哉姫が微笑ましく見つめるので何となく照れ臭く感じつつ、太一はぱくっと団子を一口食べて美味しいと言いました。二人の何処となく良い雰囲気にむっと眉を寄せたのは残された本多と秋紀の二人ですが、太一に倣うのは癪な気がしてそれぞれお茶を飲んだり景色の良い庭をちらりと眺めてまたすぐに克哉姫を見つめました。
そこで姫が当初の目的を思い出して本題に入ってもらう為、首を傾げながら口を開きました。

「それで話ってなに?」

「!そうだった、克哉さん」

「あ…っ」

「ちょっと!」

先手必勝とばかりに反応をすぐに返した太一はさっと身を乗り出して姫の着物の長い袖から覗いた白魚のような手を両手に包み込み、その子犬とよく似た真っ直ぐな飴色の瞳で見つめました。いつ誰が先に皮切りをするか、それを窺っていた二人はすっかり先を越されて声を挙げましたがこれはもう太一の勢いを止められません。姫の瑠璃の瞳が一度瞬いてきょとんと丸くなりましたがいつものほんわかとした柔らかい笑みを浮かべると続きを促すように「ん?」と瞳を細めます。

「克哉さん、俺と結婚して!」

「「あぁ゛ーっ!!」」

「…へ?…え、結…婚…?誰が誰と?」

「俺と、克哉さんが」

「…へぇー、俺と太一が結婚かぁ…凄いなぁ………って。け、けけっ結婚?!!俺と太一が?!」

すっと息を吸い込んで太一が言い切った瞬間、本多と秋紀の絶望に染まった声が同時に響きました。仮にも貴族とは思えないような品の無さです。しかし言ってすっきりしたのかなにやら晴れやかな顔をした太一は相変わらず熱を込めた眼差しで姫を見つめ、いつになく真面目な様子で反応を窺います。…もう既に外野は眼中に入っていないようですね。
かく言う言う姫も、一瞬何を言われたのか理解しきれていないようでしたが次第にじわじわ言われた事が頭に染み込んで来たのか、頬や握られた手に熱が込み上げて来てしまい瞬く間に顔を真っ赤にして手を振り解くとずざさっ!と距離を開けて後ずさってしまいました。それを見て太一が離れてしまった手の温もりを残念に思いつつ、それより克哉姫の驚愕に染まった表情にしょんぼりと眉尻を下げて苦笑を一つ。

「あっ、克哉さん!」

「むっ、むむむ…っ無理だろ!オレはこんな格好してるけどれっきとした男なんだってば!!」

「分かってるよそんな事。でも大丈夫!俺、愛の前には性別なんて関係ないと思ってるからさ!それに実家も俺が戻るなら、克哉さんくらい美人な男だったら目を瞑ってくれるだろうし」

「何言ってるんだよ太一!目を覚ましてくれよ!って言うか本多に秋紀くんも止めてくれよ!」

性別の事を言われ一瞬きょとんとしましたがすぐに「何だそんな事か」とばかりに頭を掻いた太一は手をひらひらさせました。そしてにこにこ、と正にそんな擬音が相応しい満面の笑顔で太一が更に言い迫る台詞に、克哉姫は何やら身の危険を感じて着物が皺になるのすら構わず益々後ろに下がると更に常識で考えろとばかりに叫びました。どうやら姫はノンケのようですね。(普通はそう)
そこで姫が視界の端に未だ絶望に浸っていた二人に助けを求めると、それが更に最悪な状況を作り出していくとは知らずに泣き出しそうな気持ちになりました。まさか今まで年が近い弟のように思っていた相手が自分に求婚して来るなど思いも寄らないでしょうからね。

克哉姫の悲痛なまでの叫びにハッとした二人は漸く面を上げるとすかさず本多が太一を克哉姫から引き離してごつんっ!と拳骨を繰り出し、秋紀がその内に猫のような俊敏さで姫に駆け寄れば大丈夫かと心配するように顔を覗き込みます。本多の拳骨を喰らって痛みの声を挙げる太一に心優しい姫はそれは流石にやりすぎなんじゃ…と自分が助けを求めておきながらそう思ってしまうと、気にしなくて良いからと息がぴったりな二人に止められまるで心が読まれたような気で吃驚しました。

「え…えーと…あの、」

「だぁー!ったく、こいつに先越されたんならしょうがねぇ…克哉っ!」

「克哉さんっ」

「っは、はい!」

暴れようとする太一を押さえつけつつ、今度は突然本多が声を挙げました。
何やら先を越されたと言っていましたがいきなり大声で名前を呼ばれ更に吃驚した姫はそんな事に気付きもしないまま思わず背筋をピンッと伸ばし姿勢を直すと肌蹴ていた綺麗なその素足を裾に隠し、更には秋紀にまで声を張り上げられた事によりドキドキと心臓が早鐘のように高鳴って仕方が無い様子。一体何を言われるのか、何かしただろうか、見当違いな事で頭を巡らせながらいると太一を未だ羽交い絞め状態で捕まえたまま雰囲気の欠片無しに本多が口を開きました。

「こんな奴より俺と結婚してくれ!」

「はぁああ?!!」

「駄目だよっ!克哉さんは僕のお嫁さんになってもらうんだから!僕がこの先ずーっと幸せにしてあげるよ、克哉さんっ」

「な、あ、秋紀くんまで?!」

今日は一体何の日だ!エイプリルフールか、エイプリルフールなのか?!(この時代にそんなものありません)太一に始まり本多に秋紀…競うようにして克哉姫に求婚を申し込む展開に付いていけない姫はぐるぐると目の回るような流れに口をパクパク金魚のように開閉させ必死に思考の中身を整えんとしています。
しかしそんな姫の混乱も蚊帳の外、一人の姫を我が物にせんとあの手この手で言い争う男達はまるで見苦し…じゃない、とても必死で思いの強さが如何にあるかどうか顕著に表しています。いつの間にか拘束から抜け出した太一まで再び騒ぎに割って入り、克哉姫は自分の物だと忠犬宜しくわんわんと吠えてはご主人様もとい姫にどさくさに紛れ抱きつきそれが更に反感を買って煽りを増していきました。求婚をするだけしておきながら全くと言って良いほど自分の言葉を聞こうとしない三人に置いてきぼりを食らっていた姫は次第に眉を寄せてその美しいかんばせを徐々に俯かせ、ふと動かした袖の端にこつんと触れた何かに顔を上げるとそこには冷たい光を放つ硬質な物体。それは姫が育ての親である片桐さんに拾われた時から何故か持っていたと言う『眼鏡』でした。


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2008.07.03(Thu)





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