the latest //  案内・作品一覧


author 米 [write]

スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--.--.--(--)



竹取物語 三


(竹取物語パロ)

「克哉さーん!」

片桐さんと共に贈られた荷物を宝物庫にしまい終えてお隣りから貰った菖蒲の花を見ながらのんびりとお茶をしていると、ふと聞き覚えのある活発な声が聞こえてきました。

「あれ、太一?今日は来るだなんて聞いてなかったけど…どうかしたのか?」

部屋から出て顔を覗かせるとそこには『太一』と呼ばれた明るい髪色をした年若い一人の青年が屋敷の垣根前に立っていました。 若草の単に萌黄の狩衣を着た彼は幅のある袖に構う事なく、ぶんぶんと手を振っている姿はまるで垢抜けない少年のようですがこう見えて実は上流階級の出なのです。
通り名は石作り皇子と言うのですが本人はあまり気に入っていないらしく、姫には身分の差を匂わせるそれよりも本来の名を呼ぶように頼んでいました。 彼は生まれた家が他の貴族とはまた少し違ったしがらみを抱えている為にそこから抜け出そうと自由奔放に出歩いていましたが、以前美しい姫の噂を聞きつけてやって来た日に奇跡的に見つけた克哉姫を一目見た時からその噂以上の美しさ清らかさ、そして暖かな笑顔と甘やかな声にすっかり魅了されてしまいました。そして今では貴族には稀として見られる人懐っこさと気さくで砕けた調子で克哉姫に会いに来たり文を出したり、時には得意の弦楽を聞かせる為に自らが住まう屋敷へと呼び寄せて遊び、対する姫自身も太一が軽く声を掛けたり誘いを掛けてくれる事に対し他の贈り物ばかりを送り付けて来る周りとは違うのだと僅かに感じて次第に心穏やかになっていました。そう、いつからか姫は太一が弾く弦の音に合わせ自らも長歌を楽しみにしていたのです。音楽を共に愛し気さくに話せる相手…太一とは姫にとってまるで弟のような存在でした。

そんな彼の予告ない登場に克哉姫はぱたぱたと駆け寄り屋敷の中へと誘います。

「まぁ良いや、兎に角中に入って。丁度お茶してた所だから太一の分も淹れるよ」

「わーいっ、克哉さんありがとー!そんじゃお邪魔しまーす…って、そうじゃなくってさ。実は折り入って話があるんだよね、…お茶飲みながらで良いから聞いてくれる?」

「折り入った…話?」

「うん」

いつになく真面目な顔つきと雰囲気で先程の明るい様子と一変して言う太一に克哉姫はぱちりと瞬きました。性別は男性ですがそこらの女性よりもよっぽど白く滑らかな肌に長身ながら華奢な身体付きをした姫のそんな仕草は対する太一の胸を無意識にギュッと鷲掴んでしまいます。さらりさらりと色素が薄い髪の一房が小首を傾げた拍子に横から流れ落ちきょとんとした表情を浮かべる姫の頬に掛かり、そんな一連の流れにすらときめかずにはいられない自分をまるで初恋をした初な子のようだと太一は思ってしまいますがそこはお約束と言うべきか、やはり天然・無自覚・鈍チンの三拍子が揃った克哉姫はほわりと柔らかい微笑を浮かべて疑問符を浮かべた後太一の手を取り中に入る事を促しました。いやはや、自分自身にも他人にも無自覚なのは怖いですね。

が、しかし。
屋敷に入ろうとする太一と姫の後ろ背にまたも掛かる無駄に大きく雄々しい、野太いが張りのある声、そして変声期を迎えたばかりでかまだ幼さが見え隠れして残る猫のように甘い声をした若い声が。

「克哉!」

「克哉さん!」

慣れ親しんだその二つの声についつい姫は振り返ってしまいました。

「本多…それに、秋紀くん?」


スポンサーサイト

2008.07.03(Thu)





/
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。