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author 米 [write]

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竹取物語 二


(竹取物語パロ)

片桐さんが克哉姫を拾い育てるようになり、あれから三ヶ月ほどの月日が経ちました。
克哉姫は育ての親である片桐さんが沢山の愛情を注いでくれたお陰か、心身ともにとても清らかで心優しい慈愛に満ちた美姫として瞬く間に成長を遂げ、今や都では誰一人として姫の名を知らぬ者はいないと謳われるほどとなりました。そしてその姿はまるで月が輝くばかりに美しいので名や響きも似ている事から愛称として『かぐや姫』とも密やかに呼ばれるようになっていて、そんな姫の噂を近く遠く聞きつけた多くの男性が妻として迎えたいと思い文や面会を申し込まれるようになり、始めはただの一般庶民として慎ましく暮らしていた片桐家にはいつしか溢れんばかりの贈り物が贈られて家も気が付けば大きくなっていました。

そんなある日のこと、普段は温和な片桐さんの柔らかい声がいつになく困り果てた色になって克哉姫の耳に届きました。

「うーん…参ったねぇ、今日もまたこんなに沢山の贈り物が届いているよ。克哉姫」

丁度屋敷の庭に下りて季節の紫陽花を愛でていた頃、振り向けば手をこまねいたように組んで困った顔をする片桐さんに心配になったのか、とと…っと着物の裾を汚さぬように近づきその目の前に鎮座する品々を克哉姫もまた目にしました。
ちらりと見えたそれらに改めて下履きを脱いでから縁側に上がり畳の青い香りがする上へと共に座れば、同じように二人はのんびりと眉を寄せ小さく息を吐きます。

「そうですね…片桐さん、やはり皆さんにお返しする事は出来ないんですか?なんだか逆に申し訳ない気が…」

「確かに僕もそう思うよ。けれど中には官吏の方から贈られた物もあるし…返してしまう方が逆に失礼に当たる場合もあるからね」

「ならまた宝物庫にしまっておきましょうか?少しなら、まだ中に入ると思いますよ」

しかし欲のない片桐さんと克哉姫の二人は贈られる品々に手を付ける事はあまりなく、どうしてもと強く受け取る事を願われた着物や櫛に簪、他傷みやすい食材などはそれでも有り難く頭を下げてからきちんと使用したり消化して、そしてそれ以外の物の大半は全て家を大きくした時に建てた宝物庫にきちんとしまって置き、それも近々では破裂してしまいそうなくらいの量になって来ました。
克哉姫の言葉にしょうがいないね、と片桐さんは表情を苦笑に緩めて頷くと立ち上がって持ちやすい物から抱え始めます。それに倣って克哉姫もまた、反物を抱えて付いて歩きます。
いっそのこと使用人を何人か雇えば良いのですがわざわざ人にやらせる事でないしと二人は毎度思うのでした。

「そうだ片桐さん、お隣りのお婆さんから菖蒲の花を貰ったんですよ。折角ですから後で生けても良いですか?」

「おや、それは素敵ですね。お隣りにはまたご挨拶に行かないと…ではお茶を淹れながら菖蒲のお花見でもしましょうか」

「はいっ」

なんてあまりに呑気な会話を荷物を運びながらする片桐家は今日も平和そのものでした。しかし、この後また新たに克哉姫を求める若者達が屋敷に訪れて来る事を未だ誰も知りませんでした。


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2008.07.03(Thu)





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