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author 米 [write]

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触れた指先の温度


クリ←シン(ED後)

ねぇオレはあの時初めてお前の手に肩に髪に触れたんだ。お前の浅い息遣いを頬のすぐ傍まで感じたんだ。
16年間一緒にいたのに、オレはお前のことなんかこれっぽちも知らない。分かたれてからは対立して睨み合いこそすれ手を取り合うなんて出来っこなくて、でもお前と身体が分かたれてすぐ胸にぽっかり穴が空いたような感じがしたんだ。例えばこれを空虚って呼ぶのかな、そうなのかな。
それでお前と漸く触れ合えたと思った時にはもう遅くてオレを甘いと罵る声はぜいぜいと掠れてたけどほんの少しだけ呆れたような雰囲気を感じたんだ。オレが甘いって言うなら今まで中にいたお前だって甘いよってみんなから隠れて小さく笑った。ゆっくりと目を眇めたお前はそんなオレのことをまるで億劫そうに鼻を鳴らしてみせて息を吐いた。それからお前はオレを突き放すと代わりに憧れた人との最期を望んで、聞いたこともないやさしい声を震わせながら真っ黒な闇に呑まれていった。

ねぇクリード。オレ、お前と16年間一緒だったのにお前のこと何も知らなかったんだ。だからお前があんなやさしい声でやさしい顔を見せるなんて知らなくて、触れ合った手の血の気が失せた温もりはお世辞にもあたたかいとは言い難かったけどオレには十分あたたかく感じたよ。ぽっかり穴が空いた胸が今度はざわざわ波を立てたみたいに騒いだけど、でも嫌じゃない。寧ろなんて言うのかな、凄く泣きたくなるような切なさと喜びに満ちていた。
シーブルの漣はこんな音を立てたりしなかったのに不思議だね。そう言えば一緒に過ごしてたなら同じ波音を聞いてたんだよな、同じ朝焼けや夕焼けを見て星を見上げながら目を細めたんだよな。

そして思えば、たったひとりの為に力を振り絞ったあの時のお前は今のオレと同じだと何処かで思ったんだ。オレを用済みだとか器だとか脆弱だとか散々罵倒したし散々痛めつけて来たけどそれでもそれは、もしかしたら、オレの預かり知らないオレの歪んだ意思をお前が奪ったんじゃないかって思ったりして。
あの時感じたお前が離れたことへの感情の確かな名前をオレはまだちゃんと理解してないけど、でも、長年一緒だった兄弟みたいに何処かで感じてたんだろう。あの日漸く触れることの出来た手からまた一つになれたらと本当は願ってた。漸く分かり合える可能性が出て来たのにどうしてまた離れるのって。オレより2000才も年食ってるくせに今更生きることを諦めて放棄するなんて、あんまりだ馬鹿野郎って。引き摺るように距離を離され顔が見えなくなる間際、お前がオレに向けてあの人に向けたようなやさしい笑顔を見せたりしたから尚更、オレは涙が止まらなかった。

クリード、クリード。
もしオレがお前の存在に気付けていたらお互いの何か些細なことひとつでも変わったことがあったかな。お前と向き合って幾ら傷つけ合ってもいざという時ちゃんと手を伸ばせるような距離でいられたかな。お前の手が指が俺の肩に力なく触れて突き放した瞬間もそのまま離すまいと意地を張れたかな。後悔しても遅いと罵られてもオレは馬鹿だし諦めがつかない性格だからしょうがないんだ。

クリード、オレ、今度は一方的に触れ合うだけじゃなくてちゃんと手を取りたいよ。なぁいつかもしかして会えたなら、あの冷たくてあたたかい手をオレと繋いでくれるかな。まだ、お前が触れた箇所が、お前に触れた箇所が、じんわりと暖かいんだ。



(どうしたら涙は止まりますか)
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2009.02.28(Sat)





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