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author 米 [write]

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竹取物語 一


(竹取物語パロ。色々捏造)

その昔、竹取の翁と呼ばれた一人の男が野山に分け入り竹を取って暮らしておりました。
竹取の翁こと片桐稔(以下片桐さん)と言うその人はある日、いつものように竹を取りに山に入りましたがそこで竹林の中で他とは異なった輝きを持つ竹を見つけました。片桐さんはその如何にも気が弱そうな顔を不安と怪訝の二つに染めながら恐る恐る竹に近寄りました。するとどう言う訳でしょうか、根元より少し上に当たる竹の腹が一層淡く光りを増し、心地良い安らぐような温もりを感じました。

いつもであれば何かしらの不安を感じても可笑しくない片桐さんでしたがこの時ばかりは妙に安心感を覚え、この竹の事が気になって仕方がありませんでした。その為、意を決して手に持っていた斧で切っても平気そうな所をすぱんっと綺麗に切り落とすと、なんと言う事でしょう。
光り輝いていた竹の中には可愛いらしい一人の小さな男の子がいたのです。

「わぁ…こ、これは…一体どう言う事なんでしょう。今まで竹の中に子供がいたなんて聞いた事もありませんし…こんなにも愛らしい子をこのまま置き去りにしてしまうのも可哀想ですね」

子供は片桐さんが見た事もないような愛らしい子でした。
淡い色素の髪は見ただけでもふんわりと柔らかそうで一本一本の髪がまるで絹のように細いのです。それに子供の肌もまるで砂糖で作られたかのように甘い香りがして色白で、穏やかに眠っている頬はほんのりと薄化粧をしたような桜色。絢爛ではありますが程好く派手さが抑えられた紅色を基調とした金糸銀糸の刺繍が縫われた着物の端から覗く小さな手は、当たり前ですが片桐さんの何倍も小柄で、桜貝で爪を誂えたようなつやつやふっくらの指はそっと伸ばされた片桐さんの手を緩く握ったのです。
そして気が付けば子供はその大きな瞳を開いていて、その瞳は空よりも澄み海よりも深い瑠璃色のきらめきをしていました。それは何よりもその子供の魅力を表していて正に神の産み落とした子とはこのような子の事を言うのでしょう、子供のいない片桐さんはそう直感しその子供を取り敢えず我が家へと連れて帰り、暫く迷った末に既に失くしている妻と子の代わりに大切に大切に育てる事を決めました。

「それにしても名前はどうしましょうか…。…そうですね、『克哉姫』と呼びましょうか。さぁ、あなたはこれから『克哉姫』ですよ?」

連れ帰った子供を竹細工で作った籠に入れて寝かせてあげるときゃっきゃと愛らしく笑うその姿にほわりと温かい気持ちが胸に芽生えます。子を亡くし妻を失くし長いこと一人で居た片桐さんはこの子供を自分がきちんと正しく真っ当に生きていく為の活力にせよと神様がくれた宝だと信じました。
そして名前を決める為に『強く打ち勝つ』と言う意味から『克』を、『心を打つ、感動を齎す』と言う意味から『哉』を取って克哉としました。男の子に姫と言うのも少々可笑しいですが、寧ろ克哉姫は女児でも罷り通るほど愛らしくそして美しかった為全く違和感がありません。

この日から、竹取の翁もとい片桐さんとその義子となった克哉姫の生活が始まりました。


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2008.07.03(Thu)





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