the latest //  案内・作品一覧


author 米 [write]

スポンサーサイト


上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

--.--.--(--)



この距離の埋め方


花→→→←主(気持ちR15、主人公監禁)

夢に見る葵の顔はいつだって泣きそうに歪んでいる。ようすけ、と柔らかく色づいた唇が俺の名前を形作って、それから悲しそうに寂しそうに兎に角切ない顔で微笑うのだ。俺は葵が好きで愛していて誰よりも幸せにしたくて、ひだまりに満ちた優しい世界で穏やかに笑っていて欲しいだけだった。けれど実際夢に見る葵の顔はどれもそんな理想とは180度真逆の悲しいものばかり。俺は葵に手を伸ばして抱き締めてそんな顔するなと言い聞かせてやりたい。お前はいつもみたいに優しく、そして健やかに生きていさえすれば良いんだよと。俺はお前を愛してるから。けれど伸ばした手は触れるどころか指の先にも掠りもしないで段々と離れていく。その距離が、何より俺と葵の現実世界での心の距離を如実に表しているなど分かっていてもやはり認めたくはなかった。



だって目が覚めたら葵の泣き疲れて憔悴しきった顔が目前にあるから、俺は夢から覚めたばかりで磨り減った心に拍車が掛かってあれだけ優しくしてやりたいと思いながらもまた暴力を振るってしまうのだ。そんな顔をするな、なんてあの夢のように言ったとしてもそれは甘くなく寧ろ己の精神的な苦しさから来る謂われなき暴言。力がろくに入らない腕にさせておいて一体なにが愛だと詰られても、きっと反論は出来ない。
スプリングの弱くて鈍いベッドから、いつしか皺くちゃのシーツと一緒に落下してしまった葵の身体は今ではぐたりと冷たい床に倒れ伏していて、最早この数日間、否、数週間以上にも渡る嗜虐の極みに青白さを通り越して本当に擦り抜けてしまいそうな容貌に変わってしまったと分かる。ただでさえ肌寒さを感じるこの空間で長時間暴力の渦にと飲まれ、節々に感じるだろう痛みの痕跡に冷気が染み込みその上で更に熱を奪い去る床にと倒れ込んでしまったのだから、このままではいけないという事も。俺はのろのろと上体を起こし暗く濁った眼で愛しい筈の存在を見下ろす。一体いつからこうなってしまったんだろうか。きっかけも抜け出すための答えも自分ではもう思い出せなかった。ただ葵の以前よりも更に輪を掛けて華奢となった痩躯を、精液や血が染み込んで所々黄色や黒でくすんだシーツごと抱き上げる。腕に感じる身体の重さはもしかしたら片腕で担げてしまうんではと思えてしまうくらいで、そのあまりの軽量感にもう錆び付いてたと思っていた目の裏側からツンと突き刺すような痛みが刺激して涙が出るかと思った。けれど、実際は涙の痕を幾筋も残した葵の白い顔を見るとまるで堰止められたかのように出なかったのが本当でこんなことをしでかした俺に泣く権利なんてないんだと思い込む。

最初はただ、笑った顔が見たかっただけ。でもいつからか願いの歯車が逸れて、幸せにしてやりたい、守りたいと言う俺の思いはもう一生叶わなくなってしまった。他ならぬ俺自身の手で全てを壊してしまったから。
葵はただ此処で、俺の暴力に耐えてそして自分で自分の身体を震えないよう抱き締めている。泣き顔はあの夢の悲しい微笑と重なって俺の心臓を鷲掴みにする。どうしたらいいんだろう。どうしたら。

もうあの日、夢にも描いた温かな笑顔がどんなものだったか、どうやって見ていたか、それすらも思い出せない。それでも、俺は愛しているのだと夢の中では叫ぶしかなくて。



(この距離の埋め方は行方知れず)
スポンサーサイト

2008.12.28(Sun)





/
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。