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author 米 [write]

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下駄箱前で会いましょう


(モブ(猫背の少年)×主+かわいそうな花村)

彼はいつだってそこにいるから、必然的に擦れ違う度にいつしか会話を交わすようになっていた。

「よう、転校生」

「おはよう」

「今日も早いのな」

そっちこそ自分が来る前にいたと言うなら随分と早いと思う、とは内心に秘めておいた。けれど彼はまるで見透かしたようにその丸めた背中から連想される動物と似た目の細め方をして茶髪に染まった頭をクツクツと笑うことで揺らした。

「なぁ、今度どっか行かねぇ?」

「え」

「四六商店に新しいの入ったんだ。なんと花火。この前の雨の日に買ったは良いけど流石に悪戯に使う訳にはいかねーからさ」

「あぁ、なるほど」

細められた瞳は澄んだ茶色だが朝だと言うことで照明を点けてないからだろうか、心なし暗ぼったく見えた。その中に潜む感情の色は一つの好奇心と一つの期待、あとは試すかのような駆け引きの色だった。かと言って嘘偽りはないようでここ最近『諸事情』で脇目も振らず奔走していた身には丁度良い息抜きかもしれない。そう思えば口は勝手に形を作り頷いていた。

「良いよ。花火、初めてだから」

「え、マジ?都会にいた時は?」

「あんまり交友関係広くなかったし家族も忙しい人達だったから」

言うと彼は瞬いたあと罰が悪そうに頭を掻き苦笑を見せた。それは今まで何度も見て来た光景で、人知れず笑うと気にしないでと付け加えればふと顔を上げた彼はいつもの悪戯を思案する愉快げな顔とは違う表情で見上げた。

「んー、けど転校生の花火デビューが俺か。なんかそういうのも良いな」

「?」

「じゃあ善は急げだ。放課後鮫川行ってやろうぜ」

今日は悪戯中止などと言って、やはり何処か猫っぽい仕草で笑う彼に釣られて笑っていた。人込みの増して来た下駄箱前にそろそろ行かないとと振り向いて思えば、再度前を向いた時には彼はいなかった。ただ人込みの喧騒に紛れて後でな、と声が聞こえたようで暫くすると聞き慣れたクラスメイト兼仲間の声が聞こえた。

「はよー、東雲」

「ん。おはよう、花村」

「…なぁなぁ、今日の放課後暇か?最近テレビん中よく行ってたし、息抜きがてら付き合わね?」

「ごめん。先約」

「えっ?!」

「大事な約束があるから」

だからまた今度な、とすまなそうに、けれど無意識に柔らかく笑って答えると花村は明らかに肩を落としつつ仕方ないなと苦笑いを見せた。

約束は、守らないと。
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2008.11.28(Fri)





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