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author 米 [write]

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あなたの歌姫


(花主+一:ボカロパロ(詳しくは知りません←:続きません)

「ボーカロイド?」

「そうそう、なんか最近流行ってるっぽいぜ?歌を歌う人形とか…花村ってよく曲聞いてたりするし知らねーの?」

「や、俺は単に自分の好きなジャンルだけ聞いてるだけだし。そこまでコアじゃねぇよ」

「へー、そうなんだ」

「けど今の世の中そんなのが流行ってんだな。歌うだけなら普通に歌手とかいんのに」

「だよなぁ。俺もそう思う…けど自分の歌わせたい曲とか教えれば覚えるっぽいぜ?それに人の形してるから自分だけのアイドルとか愛玩目的もあるみたいだし」

「うわ、マジかよ?そっちのがよっぽどキツいじゃん…つーか何だかんだ言ってお前の方が詳しくね?」

「んー、気になったからちょこちょこ調べてみた」

「…お前意外と変わってるよな」

「ンなことねーよ!ちょ、何々そのキモいもん見る目!地味に傷つくんだけどっ」

その日まで、俺は友人の一条とそんな風に他愛ない話をしていた。ボーカロイドなんて言う代物には興味も何もなくて、歌を歌う人形なんてまるで金持ちの道楽だと軽く見ていたからこれからもどれだけ流行のものだろうと俺自身には一切関わり合いのないものと思い込んでいたんだ。
けど、次の日の休日やたらとデカい荷物が俺の元に運ばれて来た。

「花村陽介さんですね?本人確認でのお届け物です」

「は?」

「サインお願いします」

「はぁ…」

配達人を三人掛かりでもって丁重に運ばれて来た大荷物。請われるままに流されてサインを記したそれを剥がして写しだけを手渡され、お邪魔しましたと軽く帽子を脱いで会釈した配達人はそのままさっさと出て行った。残されたのは大人三人で運ばれた荷物。どうせなら部屋まで運べと思いながら仕方なく手に持てば、それは意外に軽くて驚いた。

部屋まで運んで見たのは差出人は記されていない明細書。ただ宛名には印字の少し滲んだ俺の家の住所と宛名。取り扱いは壊れ物注意と書かれ丁重に扱うことを示唆する言葉。荷物を塞いだテープを外し中を開けばクッション代わりに敷き詰められた真綿と目の覚めるような青いベルベットの包装。それらを取り払い、漸く目当ての中身を見ればそこにあったのは。

「ひ、人…?」

否、それは人形。
まるで眠るように蹲り眠るそれは人のようでも人より遥かに美しく整った容姿、完成された美の結晶だった。触れた手は冷たく生気は薄いどころかまるでない。灰色の艶を帯びた髪に透けるような白い素肌、ふっくりと柔らかく隆起した唇にスッと通った鼻筋。伏せられた瞼に伸びる睫毛は長く、まるでアイドルがコンサートで歌う時に使うヘッドホンとインカムのようなオプションが耳から口許につけられていたけれどどのパーツを取っても見惚れる他なかった。

「な、なんだよ、これ…」

思わず漏れた呟きに返るものはない。けれど触れる手は不思議と止まらず、辿った首筋の裏側に小さくナンバリングとコードのようなものが見えた。目を凝らしてそれを見れば、口は勝手に動いていた。

「…Voca…loi、d(ボーカロイド)…A‐01……アオイ?」

それはもしかしたら、世の中に飽き飽きしていた俺にとっての言わば運命だったのかもしれない。
当てつけの名前を呟けばふるりと伏せた瞼が震えたようで鼓動が跳ねた。ゆっくりゆっくり開かれて行く瞳にガラスのように澄んだ灰色の光を見つけて、それまで体温のなかったような肌にたちまち熱が宿る。不意に視線が合えばそれはふわりと柔らかく微笑んで、身を起こすと俺の手を取って言った。

「はじめまして。あなたのうたひめです」

それはまるで天にも昇るような、甘く軽やかな美声だった。
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2008.11.28(Fri)





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