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author 米 [write]

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いとしきみへ(あいを唄う)


(花主前提両親⇔主)

髪を頬を撫でるさらりとした手が好きだった。身体を包み込む暖かな腕に涙が出るくらい焦がれていた。あの人たちは根っからの仕事人間で家族に愛情がない訳じゃなくてただどうしてもそれが気になってしまう人たちだから、俺は昔からずっとその背を見つめて生きて、迷惑にならないようにとじっと何もかも堪えて来た。(あいしてるわ)お母さんの甘い囁きはとても優しかった。(あいしてるよ)お父さんの吹き込むような囁きは身体をじんわり満たした。(愛してる。愛してる。愛してる)いつからか、自分は愛されてないのだと思っていた。弱く幼い心は迫り上がる孤独と切なさにいつだってはち切れそうでそう思い込まなければ立っていられなかった。本当は一歩足を踏み出せばそこにあの人たちがいてすぐに振り向いてくれると知っていたのに、お母さん。お父さん。あなたたちは今も俺の名前を覚えてくれていますか。戦慄く声はあなたたちの心臓に届いていますか。手を伸ばして届かないなんて嘘、ただ途中で諦めていただけなんです。重力のように惹きついていた命と命がふとした隙間に新しい命を
生み落としてそれを囲みながらくるくると踊る。それは時に離れもするけれど決して離れたきりにはならなくて、触れ合う温度が指先の皮膚から淡く溶け合って心は泣いて叫んでた。(ねぇ、愛は確かにそこにあったの)何故こんなことを今思うのだろう。ふと開いていたとばかり思っていた視界が瞼を押し上げて開かれる。そこにはいつしか懐かしんで恋しんで求め止まなかった手があった。さらりとした手が指があの人たちと同じように優しく俺に触れた。あなたたちは近くにいなくても俺の近くに、心の隣りにいたんですね。

「…悪い、起こした?」

「…ん、ううん」

「…まだ起きるには早いよ。このまま抱き締めてるからもっかい寝てろ」

「うん…」

額に落ちて触れたキスに胸から湧き出そうなこの気持ち。幸福とはこのことを言うのですね。あなたたちに昔もらった愛情を俺は今、この広くて大きな腕に有り余るほど与えられています。俺を抱き寄せる胸に身を預ければとくとくと心音が聞こえて来て、それに耳を澄ませるとそれだけで心が安らいだ。伏せた瞼にそっと息を吐けば眠ったと勘違いした声が低く溶け込むように囁いた。

「おやすみ。あいしてるよ」

嗚呼、もしかしたらあなたたちもこうして幼い俺が眠った後に囁いてくれていたのか。胸に馴染むこの言葉はすとんと受け入れられて、俺は今度こそ手を引かれるように眠りの海に落ちた。



(どうか知っていて)
(あなたは世界中から愛されているのよ。だって私たちの子供なんだもの)
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2008.11.28(Fri)





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